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兵庫のまつり―ふれあいの祭典  −短歌祭−



第17回兵庫のまつり―ふれあいの祭典

「短歌祭」入選作品



文部科学大臣奨励賞

 腕いっぱい縄をまわしぬ笑う子を

  掬い真っ赤な夕日をすくい

尼崎市 澤田 進京



選評  兵庫県歌人クラブ副代表 吉岡 生夫

 縄の軌跡の中に近景の子供と遠景の夕日を配した構図が雄大かつ懐かしい。
 二句切れの歌。三句以下の「笑う子を掬い」と「真っ赤な夕日をすくい」が対句表現になっている。
細かく見ると初句の促音「っ」は四句の促音「っ」に呼応し、また四句の「掬い」と結句の「すくい」のリフレインが心地よい。さらに韻を踏む「い」音は初句の「い」二音に交響して快適である。
 「笑う子」は子供時代の作者であったり、作者の子供であったり、もしかすると孫であったりする。いずれも白い歯が美しい。そして「真っ赤な夕日」が明日を予祝する。



ふれあいの祭典実行委員会代表会長賞

 石一つ置きて分けたる溝の水
  野の花浮かべてわが田に入れり

丹波市 井上 敏



兵庫県知事賞

 雲間より光のはしご降ろされて
   君への手紙書かうと決める

神戸市 中納 久美代



たつの市長賞

 はにかみの笑ひ残して少年は
  野の風のやうにすれ違ひたり

飾磨郡 尾上 田鶴子



恤コ庫県芸術文化協会賞

 遺品干す六十余回の夏の来て
    戦死の兄は米寿となりぬ

たつの市 辻田 多美子



兵庫県歌人クラブ賞

 照りつける日に晒されてしらじらと
      地蔵百体みな海に向く

たつの市 田中 好美




第16回兵庫のまつり・ふれあいの祭典

平成16年度

短歌祭



文部科学大臣奨励賞

 生コンに汚れて重き安全帽

    恙なき日の夕映に脱ぐ

山口県 浅田 実


選評  兵庫県歌人クラブ代表 楠田 立身

 短歌は逆境の文芸などと呼ばれて、どちらかと言えば負の素材、マイナーな視点の作品が多いが、本年の入選作は明るい世界を詠っていたものが多かった。
 暗く不透明な時代の前途に光明を求めてアングルを構えているのだろう。受賞作も健康な労働の一点景。情景を単純に描写しているようで其の実、一首の底に深い述志を籠めている。
 窺うところによれば作者は病床にある身の由。健康な日の自らの体験か、病む日に垣間見た光景か、いずれにせよ祈りにも似た深余情を伴う素直な表現が選者の心を捉えた。



ふれあいの祭典実行委員会代表会長賞

 子を生まぬ理由聞けぬまま別れ来て

   閉ぢし日傘の襞たたみをり

神戸市 弓岡 あき子



兵庫県知事賞

 少年は野獣の如く水を飲み

     少年の顔取り戻したり

熊本県 西平 守功  



芦屋市長賞

 初夏の白き光りを編むように

  しなやかな指に交される手話

大阪府 水本 則子



恤コ庫県芸術文化協会賞

 簡潔に所在を示し夕ぐれの

    蛇口が一つひかりを返す

東京都 塩谷 いさむ



兵庫県歌人クラブ賞

 エレベーターの壁に貼られた案内図

    霊安室が「特養」にある

神戸市 谷池 宏美



第十五回兵庫のまつり―ふれあいの祭典

平成15年度

短歌祭    




文部科学大臣奨励賞

 ピノキオの話半ばに微睡む子、 鯨のおなかに朝まで眠れ

  宮崎県 田尾 英一

講評   兵庫県歌人クラブ代表 楠田 立身
 わが子や孫を素材とした作品は溺愛の余り、読む者の共感を得るところまで達しないため、歌壇では忌む傾向にあるが、応募作品に占めるこの種の作品の割合はかなりの高率である。
 受賞作は上句で状況を抒べて、ひと呼吸おき、距離を保って熟寝を願うことにより常凡から救っている。ピノキオの話の続きは子の微睡みのなかで展開されることだろう。
 可愛さに溺れず、下句に託した作者の愛と希望に読む者も素直に共感でき、読後に余韻を残してくれる秀作である。



ふれあいの祭典実行委員会代表会長賞

 その指に何を掴みて生まれ来ん エコーに仄と胎児の拳 

大阪府 細野 喜世子



兵庫県知事賞

 癒えし夫が育てしトマトの初生りを とびきり赤き色もて描く

  宍粟郡 岡本 光代



姫路市長賞

 田の草を取り終へ小川に洗ひゐる 眼鏡の先より夏がしたたる

  多可郡 寺尾 榮ね



恤コ庫県芸術文化協会賞

 「特養」の明かり今宵も点りたり 窓それぞれにそれぞれの過去

  加古川市 矢内 温代



兵庫県歌人クラブ賞

 短冊に病む子の平癒願ふ文字 滲みてゐたり雨の七夕

  尼崎市 森 聰子





第14回兵庫のまつりーふれあいの祭典「短歌祭」


 文部科学大臣奨励賞

 あこがれて職に就きし子もの言わぬ精密機械の顔となりゆく

東浦町 井上みどり

講評 兵庫県歌人クラブ代表 笹原 涼
 「あこがれて職に就きし子」という一、二句は、すんなりと職に就き難い事情が介在したことを匂わす。それでも尚、初志を貫いて念願の就職を果した子供。大いに賀とすべき結果であろう。しかし、組織の規範のうちに傾斜を深めてゆくにつれ、子供の表情に本来の生気が失われてゆくのを母親は見逃さない。
 「精密機械の顔となりゆく」と、変貌を端的な喩に結んで止めた硬質な表現が、作者の内面の哀感を強く訴える力となった秀作である。




 
ふれあいの祭典短歌祭実行委員会代表会長賞

 かすかなる風立ちきたり夕暮れをあした柱となる木が匂う

香寺町 生田よしえ
 


兵庫県知事賞

 陽炎にゆらめきながら曲り来しバスゆつくりと形ととのふ

神奈川県 坂井 ハナ
 


篠山市長賞

 旅を終へ改札出れば忽ちに日常となる視野も心も

稲美町 玉川 朱美
 


恤コ庫県芸術文化協会賞

 流れくる入道雲をあめんぼうが押し戻さんと踏ん張っている

大阪市 武谷 好見 
 


兵庫県歌人クラブ賞一席

 傘二本提げて待ちゐし女置き最終電車は雨の駅発つ

西脇市 秦 克之



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up date 2006/1/28

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